ももたろう未来塾 第3回講義

岡山吉備中央町ぶどうピオーネ

◆講義

・講 師:岡山大学大学院 環境生命科学研究科 准教授 駄田井 久 氏
・テーマ:地域課題を考えるために

<講義内容>
○研究紹介

その1 バイオマス資源を活用による地域農業の活性化
     岡山県笠岡市を対象に、BDFを利用した「エコ畜産物」生産による地域農業活性化

はじめに
・農業部門でのCO2排出量 約1,010万トン/年(2012年度|国内排出量の約1%)
・農業部門でのエネルギーの95.9%が「石油製品」
・化石燃料由来のCO2削減が必要

研究の背景
・農業生産に(化石燃料の代替として)BDFを用いた「環境にやさしい農業」の振興
BDF|Bio Diesel Fuel
生物由来油から作られるディーゼルエンジン燃料であり、バイオマスエネルギーの一種。

課題
・生産された農産物の差別化が可能か?
生産過程でのCO2排出量が少なく「環境にはやさしい」しかし、品質・食味は、通常の農産物と同様

研究の目的
・選択型実験を適用し農業生産にBDFを利用した「環境にやさしい農産物」に対する消費者の選考を明らかにする

選択型実験
・多属性な表明選考法、仮想評価法
・複数の仮想的な代替案を回答者に提示し、最も好ましいものを選択してもらう手法

研究対象地域
・岡山県笠岡市の概要 総人口|約52,000 総世帯|約23,000
大規模な干拓地(1,811ha)大規模な畜産業・園芸が盛ん
住民から廃食用油を回収し、福祉事業所にてBDFに加工、公用車・バス等に使用。
・BDF生産量 11,000ℓ/年(2013年) 9,200ℓ/年(2012年)

笠岡湾干拓地の畜産業の概要
・農家戸数15戸(酪農家|5戸、肥育農家|10戸)
・2348頭 (乳用牛) 3780頭(肉用牛)
・農業機械の経由利用量|約30万ℓ/年 約840トンのCO2
軽油を笠岡市内で生産されるBDF(約10,000ℓ)に代替することで、CO2排出量削減が可能では?

軽油利用とBDF利用時のCO2排出量比較(t/年)
・約43t/年のCO2排出量削減

専攻研究との比較
・軽油利用の農産物との差別化が可能か?
・農畜産物先行研究

選択型実験の概要
・以下の項目を説明後に実験を実施
BDFがカーボンニュートラルの性質を有すること
笠岡市がBDF事業を実施していること
いずれの農産物も「味・味覚や安全性」などの基本品質は、全く同じであることを説明

調査日   2014年7月30日、8月6日、8月30日
調査場所 道の駅笠岡ベイファーム
調査対象 一般消費者(ランダム選択)
解答形式 無記名、選択式回答、直接聞き取り
有効回答数 牛肉|103、牛乳|104

・男性:女性=30:70
・50代・60代|約50%、〜40|45%、70代以上|5%
・笠岡市以外の居住者|約90%
・BDFの特徴まで知っていた回答者|約20%

BDF利用畜産物の評価(円)
・BDF利用畜産物の評価額
牛肉|89円/100g、牛乳|25円/1000mℓ
・笠岡市で生産された畜産物に対しても、プラスの評価

BDF利用した畜産物に対する評価
同じ価格水準では、
BDF利用畜産物の選択確率>通常生産の畜産物の選択確率

結論 今後の課題
・「環境にやさしい農産物」に対する選好は高く、付加価値創出の可能性あり。
・通常農産物との差別化は可能である。
・BDF利用畜産物の評価に含まれているものは?
・情報を安価で確実に伝達する方法の確立

その2 農業×福祉による地域の活性化
     岡山県高梁市を対象に、農業と福祉のコラボレーションによる地域活性化
カーボンニュートラルの性質を持ち、ライフサイクルの中では、大気中のCO2量影響を与えない。

研究の背景
知的・精神障害者の農作
福祉分野 気分転換やストレス発散等の「園芸療法」として心理的な効果を期待
取り入れる福祉施設増加
農業分野 農業の担い手不足が問題となる中山間地域で障害者の就農が期待
→農作業を取り入れている就労支援施設の実態は?

研究の目的
・就労訓練としての農作業の利点・欠点は何か?
・心理的効果が就労訓練に優位にはたらくのか?
・実際に障害者の就農は進んでいるのか?
・農業事業を通じて施設と地域がどのように関係しているのか?

研究の流れ
Ⅰ.農業分野へ進出した福祉施設の実態
障害者の就労状況、作業内容、農作業の特徴
Ⅱ.就労訓練としての農作業の効果
AHP法アンケート調査
→農作業と他作業を比較、具体的な心理的効果
Ⅲ.福祉施設の農業を通じての地域貢献
施設と地域の関わり方

研究対象の概要
社会福祉法人旭川荘 望の丘ワークセンター
岡山県高梁市川上町に位置
川上町人口 3,207人(H22年国勢調査より)
就労継続支援B型(店員25名)
対象  知的・精神障害者
職員  職業指導員、生活支援員等12名
事業内容 農業、加工、作業請負(清掃)

調査の概要
調査実施日 2014年9月12日、10月30日
対象      望の丘ワークセンター職員9名
方法      ①ヒアリング調査
②AHP法アンケート調査
調査内容    ①施設活動の実態
農作業の特徴や地域との関係
②作業による就労訓練効果
農作業と他の作業で比較

農作業を取り入れている福祉施設の実態
現状での障害者の就農の難しい
・自家用車などの移動手段を持っていない
・新規雇用を行える生産力のある農家がいない
→中山間地域特有の条件の悪さが大きく影響
たとえ働く能力のある障害者でも中山間地域での就農は厳しい

障害者が行う作業内容
草刈、播種、防除、追肥、運搬、収穫、選別、販売等
農作業は作業が多様で細分化可能
障害者の適正に合わせて割り振れる

障害者に対する特徴の比較

農作業 加工産業・清掃作業
働く喜び ◎収穫・栽培の喜びが大きい
作業の変化 天候によって変化する◎変化への適応力がつく 作業に変化は無い×突然の変化に弱い
技術習得 ×長期で繰り返しの指導が必要 ○繰り返し指導する必要がない
体力
固定の活動時間 ×日中の農作業の適さない時間に作業をしなければならない ○空室作業であるため時間による影響は無い
農作業は障害者に対するメリットは大きい

施設・職員に対する特徴の比較
農作業 加工作業・清掃作業
作業時間 ×障害者の活動時間外に作業をしなければならない ○障害者の活動時間内で作業を終えることができる
作業計画 ×天候により作業内容が変わるため立てにくい ○天候の影響は受けないため立てやすい
農作業は施設や職員に対して負担が大きい

就労訓練としての農作業の効果
AHP法(階層分析法)
2つの項目を比べ、「どちらをどの程度より重要と考えるか」を数値化する
複数の項目間の相対的優先度を計算する

AHP法・階層図
評価基準:就労訓練の中でどの障害者の能力が重要か
代替案  :各能力の向上をはかる為に適している作業はどれか
意思伝達理解力、人間関係、作業意欲・参加など全ての項目で農作業の重みが大きい
農作業が3つの代替案の中で最も就労訓練として適していると評価

アンケート結果から
「意思伝達理解力」「人間関係」「作業意欲・参加」
農作業の「収穫・栽培の喜びが大きい」「集団実施による会話の増加」などの効果から高く評価
→就労訓練の能力向上において農業を他の作業より高く評価

福祉施設の農業を通じての地域貢献

福祉側
・他の作業より福祉的効果を得られる
・障害者個々の適正に合わせて作業を割りふり、作業効率上昇
地域側
・中山間地域において障害者の就農は現状では難しい
・施設の農業事業により、雇用賃金の創出、遊休地などの地域資源の活用等地域活性化に貢献

今後の課題
・昼間の暑い時間の作業           施設の規制による固定の活動時間
・障害者活動時間外の職員の農作業
・農業分野の補助金の受け取りが困難
→社会福祉法人の枠内で農業事業の拡大を行うには限界がある
一部農業法人化し、就労能力のある障害者や農作業専門の職員を雇用し、福祉の制度に縛られないシステムを取り入れる必要があるのではないか

○研究をまとめる
研究の背景 ・・・ 一般的な課題の整理
研究の課題 ・・・ 取り上げるテーマの説明
研究の方法 ・・・ 対象と手法の説明
結果の説明 ・・・ 調査・分析結果の説明
考察     ・・・ 結果のまとめと残された課題の整理

➢論理性は不可欠。(熱い気持ちは心に秘めて、冷静かつ客観的な視点で)
➢研究の背景と課題を明確にする。
➢既存のデータや論文・記事などには目を通しておく。

・背景から課題まででほとんどできたことと一緒である。
・熱い気持ちは当たり前で心に置き、客観的に見てまとめる。
・一般的なことと課題を明確に分ける。
・新聞などでも通しておくと切込み方や視点が変わる。

○課題発見ツール
・RESAS(Regional Economy Society Analyzing System)
・e-Stat 政府統計の総合政府が行った窓口 統計データや調査結果がまとめてある
・わがマチ・わがムラ グラフと統計でみる農林水産業
・岡山県・統計分析課
・Google scholar 巨人の肩の上に立つ
・CiNii Articles・J-STAGE 日本の論文検索
・Excel
・R フリーの統計処理ソフト

○課題解決にむけてのアクション
見せる、魅せる。
参考 伝わるデザイン 研究発表のユニバーサルデザイン

プレゼンのアドバイス
・プレゼンは重要で見た目も意識をする。
・フォント、行間に気をつけることで、評価もプラス2~3程度は変わる。
・マックのみであったフォント「メイリオ」がWindows8で使用できるようになった。(明瞭の意味)
・主題と副題の文字の大きさを変え、コントラストを作る。
・色々な色を使用すると幼稚になる。
・人を見て話をし、オーディエンスにケツを向けない。
・頭の10cm上を見て、人の目を見ているように話をする。

○知ってもらう。意識してもらう。
・知らないことはイメージできない。
・例えば若者の政治参加と謳うが、自分が政治参加するイメージができない。
・どうやったらできるのかのイメージがない。
・タイの子供に夢を聞くと「ない」と答えた。他に仕事をしらないからである。
若者に聞くと「農業をやっているから自分は幸せ」と答えた。

<感想等>
プロの研究に少しだが触れることができ、簡単だが背景から課題に向かう方法がわかった。
今いる場所を離れ関わる人を変えると、新しいこと、今まで興味の湧かなかったことにも出会うことができる。
小さいながら今実践できていることに気付かされた。
研究には情報が不可欠で、情報や事例の量が多ければ解決方法に結びつくひらめきが生まれる。
本やネットで調べ、人の話を聞き、実際に体験する生きた情報も必要だ。
自分だけが分かれば良いのではなく、周りの協力も必要である。
その為には、「見せて魅せる」工夫も手を抜けないと感じた。

農業に関して詳しく触れられている。
人はボランティア精神など協力すると気持ちがいい。
エコで作ったものを利用いているのも同じ気持ちなのだろう。
地球環境に協力していると思ってもらえることも必要と感じる。

べイダー秀吉

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